残業によって、企業と労働者にどのようなリスクが生じるのでしょうか。
企業にとっては、労働者に対して支払賃金が増加するコスト面でのリスク、労働者にとっては健康面に支障をきたすリスクが発生する可能性があります。
まず、企業側のリスクについてです。法定外時間労働による割増賃金の支払いは、企業にとって人件費の増大に繋がり、予定以上のコストの発生につながります。必要性のある残業であればコストの発生も仕方がないですが、労働者の中には、不必要な残業を行っている労働者が居ることも事実です。企業としては、労働者の不必要な残業を削減するために、労働者の意識改革と併せて、業務フローを構築し、効率的な労働が実現できるような体制作りが必要です。
また、企業は労働者の労働時間を正確に把握することも重要となります。勤怠管理システムの導入も1つの対策となります。更に、残業を行う場合には事前申請制を導入する等して、不必要な残業を行わせない体制作りも重要となります。
次に、労働者側のリスクについてです。長時間労働が続くと、労働者の健康面に影響を及ぼすことがあります。労働者に長時間の時間外労働が続き、過重労働の状態になると、心身ともに悪影響が出てくるリスクがあります。
厚生労働省によると、労働者の心身に生じた疾患の原因が過重労働にあるとして、当該労働者に対する労災の認定を行う基準として、「発症前の1ヵ月間におおむね100時間又は発症前の2ヵ月~6ヵ月間にわたって1ヵ月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合には業務と発症の関連性が強い」という基準を設けています。この事から、時間外労働の時間数は労災認定を行う上で重要な目安とされていることが分かります。
なお、労災が認定されると、企業は、労働者から安全配慮義務違反に対する損害賠償請求の訴訟を起こされたり、代表者においては、会社法429条第1項(役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う)に基づいて、役員等の第三者に対する損害賠償責任を問われる可能性が生じます。企業としては、従業員が過重労働に陥らないような徹底した管理体制を整えましょう。
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