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令和8年度税制改正大綱のポイントとは?―企業と個人それぞれの影響を弁護士・税理士が整理

2026.02.09

2025年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱は、近年の税制改正の中でも、企業経営と個人の生活の双方に直接的な影響を及ぼすテーマが多く盛り込まれた内容となっています。
税制改正大綱は、毎年多くの改正項目が盛り込まれるため、「結局どこが重要なのか分からない」と感じる方も少なくありません。
本コラムでは、閣議決定の内容を踏まえて、企業経営や個人の意思決定に実務上影響が出やすいポイントに絞り、分かりやすく整理します。
制度の細部に踏み込みすぎるのではなく、「今回の改正が何を目指し、何が変わるのか」という大枠を掴んでいただくことを目的としています。

※このコラムについては、2026年1月14日時点で作成した令和8年度税制改正大綱に基づいた一般的な概要のまとめとなります。本コラム内に記載した内容と異なる法案が今後制定される場合もありますことをご留意ください。

1. 令和8年度税制改正大綱の全体像

閣議決定された令和8年度税制改正大綱は、大きく次の三つの政策目的を軸に構成されています。

1-1. 物価上昇を踏まえた税負担の調整

物価上昇が続く中、従来の課税最低限や控除制度が実態と乖離しつつあるという問題意識が明確に示されています。特に、いわゆる「年収の壁」が就業調整を招いている点については、税制と社会保障の両面から見直しを進める必要性が強調されています。

1-2. 成長投資・賃上げを通じた経済の好循環

企業による設備投資や研究開発投資、持続的な賃上げを促進することで、経済全体の成長と分配の好循環を生み出すことが重要な柱とされています。税制は、その行動を後押しするための手段として位置付けられています。

1-3. 課税の公平性確保と制度の適正化

一部の資産取引や不動産を巡る課税について、過度な節税や不公平感が生じないよう、制度の適正化を図る方向性も示されています。

2. 個人に影響の大きい改正ポイント

個人所得課税:主なポイント

1) 基礎控除額・給与所得控除の最低保証額:物価上昇に連動した控除見直しの枠組み+具体的な引上げ

「物価が上がると控除の実質価値が下がり、実質増税になる」課題に対し、当面の具体措置として、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額を4万円引上げ、控除額が62万円になります。
給与所得控除の最低保障額も、65万円→69万円に拡大されます。
源泉徴収は令和9年1月1日以後支払分から適用とされ、初年度は月次ではなく年末調整から対応するなど、事務負担への配慮も本文で明記されています。

2) 中低所得層向けの特例:基礎控除加算

基礎控除の特例として、各年分に以下の特例が適用されます。

①令和8年分・9年分

合計所得金額655万円以下の層に、以下の基礎控除加算額を設けます。

  • 489万円以下は42万円、489万円超~655万以下は5万円
②令和10年分以降

合計所得金額132万円以下の層に、以下の基礎控除加算額を設けます。

  • 37万円
3) 住宅ローン控除:期限5年延長+借入限度額・床面積要件などの緩和

適用期限が令和12年12月31日までに延長されます。
加えて、既存住宅のうち、省エネ性能の高い認定住宅・ZEH水準省エネ住宅に係る借入限度額の引上げ、子育て世帯への上乗せ措置の対象の拡充、床面積要件の緩和等の見直しも行われます。

4) NISA:0〜17歳の「未成年者特定累積投資勘定」等の具体設計

NISAのつみたて投資枠の口座開設可能年齢が0歳〜17歳へ拡充されます。(口座保有者であるお子さんが0歳~17歳の間は、年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円となります。)

5) ふるさと納税:寄付金控除額の見直し

ふるさと納税による特例控除額の控除限度額が、①個人住民税所得割額の2割、②次の金額とのいずれか低い金額になります。

道府県民税77万2千円

指定都市に住所を有する者の場合、38万6千円

市町村民税115万8千円

指定都市に住所を有する者の場合、154万4千円

上記の改正は、令和10年度分以後の個人住民税について適用するとされています。

6) 極めて高い水準の所得への負担適正化

特定の基準所得金額の課税の特例について、対象者と税率が以下の通り変更になります。

課税特例対象者

基準所得金額が3億3,000万円→1億6,500万円に引き下げ

課税税率

22.5%→30%に引き上げ

上記の改正は、令和9年分以後の所得税について適用するとされています。

資産課税:主なポイント

1) 教育資金一括贈与の非課税:信託等可能期間の延長なし(令和8/3/31で終了)

教育資金管理契約に基づく信託等可能期間(令和8年3月31日まで)を延長せず終了。ただし同日までに拠出された金銭等については、引き続き非課税措置は適用可能とされています。

2) 事業承継税制:特例承継計画等の提出期限延長

事業承継税制の特例承継計画、個人事業承継計画の提出期限が以下の通り延長されます。

個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度

個人事業承継計画の提出期限が2年6ヶ月延長。(2028年9月30日まで)

非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度

特例承継計画の提出期限が1年6ヶ月延長。(2027年9月30日まで)

なお、いずれも適用期限は延長されません。

3) 貸付用不動産の相続税等の評価額:評価方法の見直し


対象不動産:被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産
評価方法:課税時期における通常の取引価額に相当する金額(原則として取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額)によって評価する。

上記の改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。
なお、当該改正を通達に定める日より5年前までに被相続人等が所有していた土地に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む)には、この改正は適用されません。


対象不動産:不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産
評価方法:その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。

この場合の通常の取引価額は、課税上の弊害がない限り以下の要素を比較考慮して評価されます。

  • 出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等
  • 事業者等が把握している適正な売買実例価額
  • 定期報告書等に記載された不動産の価格等

※これらに該当するものがないと認められる場合には、前述した①の評価基準に準じて評価するとされています。(取得時期や評価の安全性を考慮)

上記の改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。

3. 法人・企業実務への影響が大きいポイント

法人課税:主なポイント

1) 「特定生産性向上設備等投資促進税制」(新設):大規模な設備投資を促進

青色申告を行っており、かつ適用要件を満たしている法人が、「特定生産性向上設備等(仮称)」にあたる設備取得を行った場合に、令和11年3月31日までの間に経産大臣の確認を受けることで、その該当する設備等については即時償却もしくは税額控除のいずれかを選択できるようになります。(産業競争力強化法改正を前提とします。)

特定生産性向上設備等(仮称)の対象資産としては、一定規模以上の機械装置等・建物・附属設備・構築物・ソフトウェアが含まれます。

2) 研究開発税制:グローバル競争を意識した内容の拡充

戦略技術領域型に関する新しい税額控除制度の創設など、研究開発への投資や国際競争力ある研究環境の確保を目的とした制度の見直しが行われます。

制度創設以外としては、以下のような点での見直しが主な変更点です。

一般試験研究費の額に係る税額控除制度

税額控除率見直し、適用期間延長

中小企業技術基盤強化税制

税額控除率および控除税額の上限の上乗せ特例の適用期限延長、控除限度超過額の繰越

他の者に委託する試験研究の税額控除制度

国外において実施されるものに限り一定の制限が設けられる

3) 賃上げ促進税制の見直し

給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度について、企業区分に応じて制度が見直しとなります。

大企業

令和8年3月31日まで適用、その後廃止

中堅企業(常時使用する従業員の数が2,000人以下)

令和9年3月31日まで適用、その後廃止。令和8年4月1日~令和9年3月31日までは一部税額控除率を見直し。

中小企業

教育訓練費に係る上乗せ措置のみ廃止。

4) 中小企業等の少額減価償却資産の損金算入特例:価額引き上げ

中小企業等の少額減価償却資産の取得価額要件について、対象となる償却資産の価額が30万円未満→40万円未満に引上げられます。(所得税についても同様です)。

消費課税:主なポイント

1) 国境を越えた電子商取引に係る課税の見直し

1万円以下の少額輸入貨物についても、今回の改正により消費税の課税対象となります。
さらに、国外事業者による国内での物品販売及び事業者による少額輸入貨物の販売について、プラットフォーム事業者に消費税の納税義務を転換する制度が新たに導入されます。(プラットフォーム課税)

2) インボイス制度導入に係る経過措置の見直し

今回の見直しは、「制度を定着させつつ、急激な負担増をなだらかにする」方向です。主なポイントは2つあります。

(a) 適格請求書発行事業者となる小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置
  • 現状の2割特例の終了後も、個人事業者については、納税額を売上税額の3割とできる措置を2年限定(令和9年分・令和10年分)で講じる

小規模事業者の急激な納税負担の跳ね上がりを緩和するための措置、と整理できます。

現行の適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の適用を受けた適格請求書発行事業者についても、上記と同様の措置を令和8年10月1日以後に終了する課税期間から適用されます。

(b) 免税事業者からの仕入れに係る経過措置(仕入税額控除の経過)
  • 経過措置の最終期限を2年延長
  • ただし、控除できる割合は以下の通り段階的に縮小されます。
・ 令和8年10月1日〜令和10年9月30日まで:7割
・ 令和10年10月1日〜令和12年9月30日まで:5割
・ 令和12年10月1日〜令和13年9月30日まで:3割
  • さらに、免税事業者ごとの年間適用上限仕入額を10億円→1億円に引下げ

上記は令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

4. 税制改正大綱を受けてまずは何をすればよい?

税制改正大綱は公表された時点で終わりではありません。実務では、次のステップが重要です。

  • 自社・自身に関係する分野を洗い出す
  • 影響が出そうな項目について、適用時期と要件を確認する
  • 税務だけでなく、法務・労務など周辺領域まで含めて対応箇所を整理する

また、内容によっては公表時点で詳細が全て確定しきっていないものもあるため、具体的な制度導入時期を含めて今後の動向についても気にしておきましょう。
法改正にかかる諸対応に関しての疑問や不安点があるときは、まずは税理士に相談をされてみてください。

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