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職場外でのセクハラを原因とする傷病は労災となる?会食・飲み会におけるハラスメントと労災認定の判断基準、企業が取るべき対応とは

2026.01.30

「業務時間外の飲み会で起きた出来事だから、会社の責任にはならない」そう考えてしまいがちですが、近年は職場外での会食や飲み会におけるハラスメントが原因となった精神障害について、労災該当性が正面から争われるケースが増えています。
最近の報道でも、業務時間外に行われた会食の場でのセクシュアルハラスメントと、その後の精神疾患との関係が問題となりました。この事案では、「職場外」「私的な飲み会」という形式だけで、労災や会社の責任が否定されるわけではないことが改めて示されています。
本コラムでは、報道の概要を踏まえつつ、

  • 職場外の会食・飲み会におけるハラスメントは、どのような場合に労災となるのか
  • 労災認定において重視される判断基準は何か
  • 企業として、予防・初動対応・再発防止の各場面で何を意識すべきか

を、企業法務・労務の実務目線で整理します。

1. なぜ今「職場外のセクハラと労災」が問題視されているのか

報道で取り上げられたのは、勤務時間外に行われた会食の場で、上司による不適切な言動が繰り返され、部下が精神的な不調を来したという事案です。
このケースでは、会食が職場外で行われていた点や、形式上は任意参加であった点から、「私的な場での出来事ではないか」が争点となりました。

しかし、裁判では、三次会への参加自体は私的な行為としつつも、

  • 出張前に上司が女性に業務後の日程を空けておくよう指示しており、三次会への出席が出張の行程に組み込まれていたこと
  • 有期契約社員であった女性の正社員登用に上司が強い影響力を持っており、誘いを断るのは困難であったこと

を重視し、結論として労災を認める判決が出されました。

このように、「職場外だから」「業務時間外だから」という形式面だけで、会社の責任や労災該当性が否定されるわけではない点が、今あらためて注目されています。

2. まず押さえるべき労災認定の基本構造(精神障害)

2-1. 精神障害が労災と認定されるための要件

精神障害について労災が認定されるためには、主に次の三つの観点が検討されます。

  • 医学的に対象となる精神障害を発病していること
  • 精神障害の発病前おおむね6ヶ月間に業務による強い心理的負荷があったこと
  • 業務以外の要因が主たる原因ではないこと

このうち、企業実務で特に問題となりやすいのが「業務による心理的負荷」の有無です。

2-2. 心理的負荷の評価方法

心理的負荷は、出来事の内容、継続性、当該労働者の置かれた立場などを総合的に評価して判断されます。ハラスメント行為は、心理的負荷を強める要因として重視されやすい類型です。

3. 職場外の会食・飲み会は「業務」と評価されるのか

3-1. 原則論:私的行為と評価されやすいケース

勤務時間外・職場外で行われる会食や飲み会は、原則として私的行為と評価されやすく、直ちに業務とは認められません。

3-2. 業務性が肯定されやすい判断要素

もっとも、次のような事情がある場合には、業務との関連性が肯定される可能性があります。

  • 上司や管理職が主導して開催していた
  • 事実上、参加を断ることが難しい雰囲気があった
  • 業務上の打合せや人事評価に関わる話題が中心だった
  • 業務命令とまではいえないが、業務上の必要性が強かった

3-3. 二次会・三次会で特に問題になりやすい点

一次会に比べ、二次会・三次会は私的色彩が強まる傾向があります。
しかし、上司が主導して継続していた場合や、途中退席が困難な状況であった場合には、業務性が完全に否定されるとは限りません。

4. ハラスメントがある場合、労災判断はどう変わるのか

4-1. セクハラ行為の評価

セクシュアルハラスメントは、行為の内容や態様によって、強い心理的負荷を生じさせるものと評価されやすい行為です。単発であっても悪質性が高い場合や、継続的に行われた場合には、労災判断に大きな影響を与えます。

4-2. 会社対応が与える影響

労災認定では、ハラスメント行為そのものだけでなく、会社が相談を受けた後にどのような対応を取ったかも考慮されます。
相談を軽視した、適切な調査や被害者保護を行わなかったような場合、心理的負荷が増幅したと評価されるおそれがあります。
なお、会食の案内メール、業務連絡の履歴、相談時の記録などは、業務性や心理的負荷を判断するうえで重要な資料となります。

5. 企業が直面する法的リスクは労災だけではない

職場外ハラスメントの問題は、労災認定だけで終わるとは限りません。
安全配慮義務違反や使用者責任を理由とする損害賠償請求、適切な懲戒を行えなかったことによる社内統制上の問題、さらには社内外からの信頼低下や人材流出といったレピュテーションリスクにも発展する可能性があります。

6.企業が取るべき対応①:平時の予防

  • 職場外の会食も含めたハラスメント防止規程の整備
  • 管理職に対する教育・研修の実施
  • 相談窓口と社内調査フローの明確化

職場外は想定外とせず、平時からルールと意識を整えておくことが重要です。

7. 企業が取るべき対応②:発生時の初動対応

  • 被害者の心身の安全確保を最優先する
  • 事実関係を慎重に確認し、証拠を保全する
  • 安易な評価や結論を出さない
  • 労災の可能性を前提に、記録を整理する

初動対応を誤ると、問題が長期化・複雑化しやすくなります。

8. まとめ・弁護士に相談すべきタイミング

職場外の会食や飲み会であっても、状況次第では労災の対象となり得ます。
重要なのは、形式ではなく実態を見ること、そして迷った段階で専門家に相談することです。
特に、次のような場面では、早期に弁護士への相談を検討したほうがよいでしょう。

  • 業務性の判断が微妙なケース
  • ハラスメントの事実認定が難航している場合
  • 労災申請や紛争化が見込まれる場合

当事務所グループでは、社労士資格を持つ弁護士を中心に、予防から有事対応まで一貫したサポートを提供しています。
まずはお気軽にご相談ください。

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